ニコラス グアリン レオン

将来メディアプロデューサーと大学教授になること目指すコロンビア人アーティスト。
祖国はコーヒーと80年代の武力紛争で知られている南米の国である。
瓢湖の高い首都ボゴダでエキセントリックな家庭で育つ。

映画・テレビ制作コースを卒業してから、4年間コロンビアのテレビ制作会社で脚本家、ディレクターとして働く。ドキュメンタリーを軸にしつつ、文芸、社会学と小説、演劇、音楽、写真、デッサン等のアート方面にも視野を向ける。

作品テーマのほとんどは、ヒューマンストーリーについて取り上げており、歴史、芸術、哲学に由来している。その最終目的は、自分が興味をもって制作した作品を他人と共有し、自分と同じ興味をシェアしてもらう事。そして、その映像を30年後、40年後の人々に観てもらったときに、より良い作品として生き続けて貰う事。

ー クリスタルイマージュに出展予定の作品について、お話を聞かせてください。

実写映画と2つのドキュメンタリーを入れようと思ってて、あともう少しやってみたいけど、1本は実写映画で、コロンビアの友達と一緒に作った作品です。日本に来る前に完成した作品です。日本についてからもちょこちょこ編集してたんですが、それは私と、コロンビアでの大学の先輩3人の合計4人で作ってた。

「Domingo - Trailer -」(2011年)
YOREINARE PRODUCCIONES presents.

みんな就職してからも大学で会って、仕事をしながらお金を出し合ってグループを作ったアーティストコレクティブなんだけど、その人たちと。映画を作るのは高いのでみんなで努力して、予算を作って1年で1本作りたいなって、映画とかドキュメンタリーとかアイデアを出し合って自分たちの中でアイデアのコンペティションをやってその中からこれが一番面白い!っていうのをひとつ選んでそれからみんなで映画を作ろうって。

今2人はコロンビア、一人はドイツ、僕は日本。そのグループからは離れてたんだけどもう一人、フランスにいる。僕がそのグループに入る前にもう一人いて、その彼は今アメリカにいて、最近アカデミー賞取ってた。学生クラスのアカデミー賞だけど、ベストドキュメンタリー。すごいびっくりした(笑)。

ー この作品には何で参加されたんですか?

この白いやつはプロデューサーだった。すっごいイライラした(笑)。
ああ!ってなってた、本当。このドミンゴの白いやつって、全てが白いでしょ?

あるショットで卵が出てるんだけど、アシスタントさんが買ってきてくれた卵の殻が白じゃなくて肌色っぽい赤玉で、撮影しようしたら白くペイントしないといけないから、ああ!ってなって。そのペンキが乾くまで30分待たないと行けなくって、その為に全ての人を待たせてしまった。卵を塗って、待って、準備して、撮影して。

ー 公開予定の「La Siberia」について。

撮影は日本に来る前にやってたんですが、編集はこの間友達がやってくれて、今年完成しました。ボゴダ(コロンビアの首都)に近い山の地方のなかにセメントの工場があったんだけど、その工場が潰れて残ってて、日本で言う軍艦島みたいな工場だった。 だから工場だけでなくて、労働者が住む町もあったんだけど、会社が潰れて建物が劣化してきて、戦争があったみたいに崩れて廃墟化していた。人はいないしゴーストタウンみたいで(笑)。

僕の友達の家がそこの田舎の方なんだけど、散歩しながらそこに立ち寄ってここは凄いって。とても大きい場所なのに誰もいないし、戦争でもあったんじゃないかって惨状だし、そこの管理の人に聞いても誰が働いていたかも、何を作っていたかもその時はわからなかった。じゃあここの歴史を調べてみたいなって思って、彼にドキュメンタリーを作りましょう!って、それで徐々に工場の歴史を調べていたら、そこで住んでいた人や働いていた人たちがどんどん現れてきた。

「La Siberia - Trailer -」(2014年)
from Ivan Sierra

最初は工場の見た目に興味を惹かれて撮影しにいっただけだったんだけど、工場の近くのファーマー(農場主)が私その工場の歴史知ってるよって言ってくれて、そしたらその人をスタートに色々な人が現れた。
映画には30人位だけど最終的にはインタビューした人は100人を超えて、それで編集が2012年から2年もかかっちゃって、辛かった、撮影しすぎた。おじいちゃんの話は止まらないし一人一時間位かかって、編集時にピックアップするのが大変だったって(笑)。

そのおじいちゃんたちはその工場で働いていたけど、工場が閉鎖されてからは入る事が出来なかった。 撮影の時に僕たちは工場に入る許可が出て、おじいちゃんたちと入ったけど、おじいちゃんたちと僕たちではその場所に対する記憶も思入れも違う。だから働いていた時とのギャップが凄いらしくって。

結局その工場は私の住んでたボゴダの発展にとって、とても重要な町だったことがわかって、とても小さな町だったボゴダが今は都会になったのはその工場で作られたセメントで、ボゴダに住んでてもそのストーリーは知らなかった。

もう一つは僕の卒業作品。それはコロンビアにある「住宅ローンの危機」がテーマなんだけどコロンビアでは家を買うのが難しくなってきた。

お金持ちじゃないと変えないし、絶対にローン組まないと買えないけど、それでもコロンビアの文化として家って言うのは成功の象徴というか、コロンビアでは自分の家が無いと半人前というか、成功のステータスなんで、どうしてもローンを組んででも欲しいもので、将来お金があるかもわからない、支払えるかわからないのにローンを組む人がいて、将来的に困る人が多い。

正社員として仕事があって、ローンを組んだときは安定していても、コロンビアの経済は不安定で、急に会社が潰れるかもしれない。来月には仕事が無くなってるなんて事もある。でもコロンビアの銀行は貸してくれる。

それをテーマに作品を作りたかった。どれをドキュメンタリーでどう見せるのか?って話になって、普通のドキュメンタリーならインタビューとか専門家の話をいれて、どこかの写真とか記事とか入れて完成!って感じだけど、今回はダイレクトシネマというスタイルで撮ろうと思って。

被写体の日常生活から映画って作れるんじゃないかって思って。例えばその人たちの普段の生活から今回の問題やストーリーを見せられるのかなと思いながら撮影した。3つの家族があって、ものすごく貧しい家族、お金持ちの家族等、コロンビアのそれぞれ違うソーシャルクラス(社会的地位)。

みんな家が欲しいけど、それぞれの家族がどうやって家を買うのか、家が欲しくなるし、家が必要な理由について撮影した1本のドキュメンタリー。

ー 考えたものを形にするときって手法としてドキュメンタリーを選ぶ事が多いですか?

そうだね、私は映画学科の中でドキュメンタリー専攻にしました。ドキュメンタリーだけを撮るわけじゃないけど、その方が詳しい。

ー 以前いた大学でも映画を専攻されていたんですよね?

私のいたスクールでは毎学期作品をみんなに見せなければいけなかった。映画祭みたいな感じで、映画館で一日中1~4年生までみんなの作品見なければ行けない。すごく競争が激しかった。

これはひどい、これはヤバいって、学生も先生も一緒になって「これはつまらない!」とか、でもその分上手く出来ていいみんなからコメントがもらえたら凄く嬉しい。

それで一番ベストな先輩の作品はラストに流されたり、彼らは所謂アートっぽい作品て言うよりも、商業的ってわけじゃないけど、もっと普段一般的に映画館でみかけるようなものです。

アート寄りで実験的なわかりにくいものじゃなくって、それが面白くって、こういうものを作ってみたいなって思って、彼らはその当時、僕が入学した2004年にはすでにグループを作っていた。私は彼らの映画をみて、僕も参加させてくださいって。それでそのグループに入った。

ー なぜドキュメンタリーを選んだのですか?

前の大学のワークショップは凄くおかしな先生が担当だったんだけど、おかしくて面白い人(笑)。彼がダイレクトシネマっていうナレーター無し、音響さん無しのただ日常的なものから作ったスタイルの先生でした。

そのワークショッップの中ではまず映画を見る、それから映画をみてからテーマを選ぶ、それから撮影する。そして毎セッションで一分程の映画が作られた。だからその最初のテーマがアクション(動作)で料理を作る、自転車に乗るとかのワンアクションからなんでもいい。その中からアクションを選んで撮影しに行って一分間のドキュメンタリーを撮影しにいかなければならない。次のセッションでみんなに見せて、良くなかったらもう一度撮影しに行く。

で、そのワークショップでは沢山映像を作る機会があって、作るのがどんどん好きになっていったんで,、あぁ、ドキュメンタリーいいなって思ってドキュメンタリー専攻にしました。

ー ドキュメンタリーが好きな理由は?

私の様な普通の人からでも面白いストーリーが出来るのが良いと思う。フィクションの主役、ヒーローはみんな完璧で、特別な人間で、力があってスパイダーマン!みたいな。スパイダーマンはめっちゃ好きだけど(笑)。
あとハリーポッターが魔法でヴァーー!ウォー!って、多くの人々の中から特別な選ばれた一人の人間主人公だったりするけど、それよりも私は版画彫ってるおじいちゃんとかをヒーローにするのが好き。

例えばあなたのドキュメンタリーを作って、それを見た人にこの人いいねって思ってもらえたら嬉しい。だから普段乗ってる京都のバスや風景を面白く見せる事が出来たら嬉しい。それがドキュメンタリーの、私が好きなところです。

普段ある事、毎日ある事を、普通の人間を、魅力的に見せる方法じゃないかなって、それが好き。その人とも付き合えるし、全然知らないおじさんと友達になったり、それが好き。実写映画もいいんだけどね、こっちがいいかなって(笑)。
その人がもってるストーリーとか何かを見つける、時間はかかるけど。一杯勉強にもなるし、知識にもなる、これ好き。ほんとに、セメントの作り方学んだしね(笑)。
おじーさんがあーだこーだ言ってきて、だからドキュメンタリーが好き。

ー インタビュー時の機材や状況は?

私は最初からビデオカメラを入れます。私はファーストインタビューはとても大事だと思う。最初と最後のインタビューが重要。機材はカメラと、一人ならピンマイク。音響が別にいたらマイクを別でいれる。それくらい。

あとファーストインタビューが好き、いつも。例えば今のこの状態(笑)。
二人は私の事はあまり知らなかった。だから私は今迄の事を全て説明しなければいけないでしょ?でも2回目のインタビューだと、この事は前回話したし知ってるだろうから説明しなくてもいいやってなりかねない。でもこのドキュメンタリー、インタビューの鑑賞者はいつも初めて。だからこっちから説明しないとなにもわからない。だから最初は大事。

ー 確かに一番最初のインタビューってお客さんと同じ立場ですもんね。

そうそう、だから私は好き、ファーストインタビュー。あとラスト。それで2回目はあまりおもしろくない。けど10回目位のインタビューは面白い。10回目以降になってくると、一回目では言わないでいた事を言ってしまったりするから。信頼関係が出来るから言っちゃうこともある。だから最初からきちんと撮影した方がいいと思う。

けど一回目の撮影をしない人もいて、彼らは信頼関係が出来上がってからカメラを入れる。だから最初は殆どもたない、ノートを持って書いたりはするあとは先に専門家の意見を聞きに行ったり、別の人に調査を頼んだり研究してから撮影しに行く監督さんもいる。

今映像コースのカフェスペースでニコラスさん主催の上映会が行われていますよね。

あれはメランコリックな気持ちから(笑)。
私は来年京都精華大学を修了します。で、また今進学するかどうか悩んでて。もう間もなく精華を卒業して、大学に来れなくなったらドキュメンタリーの授業は精華には無い。私はドキュメンタリーが好きだけど、他の人とは撮影があまり出来なかった。だから誰かとドキュメンタリーを撮れたらいいなって思ってました。

それで前の大学のワークショップでやっていたことを思い出して、だからそういうワークショップを精華大学でも出来ればいいなって思ってて。先生と友人に話して、何人かでグループ作って初めて見ればいいんじゃないかなって。じゃあまずは皆で映画を見るって言うのはもっとパブリックにして、ドキュメンタリーを好きになってくれた人でグループが出来て行くんじゃないかなって。

それじゃあやるかって、ドキュメンタリー映画の上映会しましょうって。だからそういうスペースを作っているところ。ラッキーがあればだけどもし上手く言ったら授業にできるかも。でも今はドキュメンタリー映画を観て興味を持ってもらえたら嬉しい。

ー 精華大学映像コースに入ってみていかがでしたか?

精華の映像コースはあんまり他にはないね、普通の映画スクールって感じじゃなくてもっとアーティストって感じがする。私はもっと普通の映画スクールで育ってきた人だから、そこでちょっとメランコリックになる、みんなで映画観ようって(笑)
映画を作るグループ作るとかね。

ー ニコラスさんの通っていた映画スクールからみた精華大学は?

すごい私はアートワールドだねって思ってる。みんなギャラリーとか向いてるんじゃないかなって思う。

元々日本に来たのはドキュメンタリーとアニメーション組み合わせたプロジェクトを作りたかったから日本に来た。それで、アニメーションの技術がわからなかったからそれを学びたかった。その時相内先生(映像コース教授)と出会って「いいよ、私が教えてあげる」って言ってくれたんで精華に来たんだけど、私は映画を作って、映画館を借りて上映会をすると思ってて、そのつもりでいたんだけど、展示やるよ!って言われて。そこで作品を流さないといけない、ああ!ってなって(笑)。

ミュージアムとか私はあんまり行かなかったし、映像でもコンテポラリーというか、現代アートは考えた事が無かった。今まで普通の映画館でやってたから。でも、それはやって良かったと思ってる。

どうしても私の中では映画は映画祭、映画館を借りてやる。もしくはテレビでって方が近かったからそれで、テレビ局でも働いてたからチームワークというか、監督、撮影監督、脚本家、編集etc…

そういう世界から精華に入ったら、おお…アーティストやなみんな…って(笑)。

ー そうですね、結構個人で制作してるひとが多いかも。

でも出会って良かったと思ってる。
それと、考えたのは多分精華のサイドにいないと映画スクールサイドでも新しい表現が出来ないかもしれない。ちょっとわかってきた事は精華サイドで映像そのものを研究して実験して、新しい表現見つけて、映画スクールサイドでアウトプットできそう。だから精華はラボみたいだと思う、映画スクールは会社。関係あるけどちょっと違う。

私からみると、精華はアーティスト。映画スクールは映画つくりたい!人が沢山欲しい!来て欲しい!だからギャラリーでやるなんて思ってもいなかった。

ー ニコラスさんはこれからギャラリーでやりたいなと思う?

そうなってきたね。どうしてもやってみたいのは、ギャラリーにも沢山人が来て欲しいと思ってる。どうやってギャラリーに沢山人が来てくれるのかなって。そういうチャレンジが面白いと思う。

ごめんなさい、古いテレビ局的な考え方かもしれないけど。アーティストさんで「私だけがわかればいいや」ってのはあまり私は思わない。普通のおじいさんがギャラリーに来て「おお、すごいなこれは」って言ってくれたら嬉しい。仲間のアーティストさんよりもカフェのお姉さんとかがいいねって言ってくれると嬉しい。

ー 関係者でギャラリーが埋まるというよりも、もっと一般人も来てパブリックな?

うん、私は好き。私は前はアートについてすごい偏見を持っていた。あからさまていうかギャラリーとか現代アートの人はいつもつまらない!とか、つまらない作品を作っている、誰にもわからないとか、でもそうじゃないっていうのがわかってきた。

アートサイドで発見した事が凄い良いアイデアだって事とかね、本当に面白いアーティストがいるって言う事がわかってきた。

ー 精華大学に来た事は良い変化だった?

そう、良かった良かった。期待はしてなかったんだけど(笑)。
でも良かったと思ってる。ちょっとバランスをとりたいと思ってる。

ここからドキュメンンタリーをやめてアーティストになりたいわけじゃないけどもうちょっとアートサイドにあるものを加えて行きたいと思う。インスタレーション作る時もドキュメンタリーと混ぜてみたいねって持ってた。

今やってる新しいプロジェクトもそんな感じ。もっと普通の映画やドキュメンタリーとアートの間にあるものを作って行きたいな。

ー ニコラスさんが今後やって行きたい事は?

そうだね...またプロデューサーやってみたいな。

ー イライラするけど?(笑)

できるかわからないけど、好きだね(笑)。
現代アーティストの役割は社会の中の小さなグループに向かっているのかなって感じてる。だからギャラリーとか現代美術館に行く人だけに向けているアーティストさんが多いのかなって。

社会の狭いところ、彼は一生懸命頑張ってるのに、素晴らしいものを作ってるけど、ターゲットは狭いと思う。
今はプロデューサーの仕事って私のために、アーティストプラス、もっと幅広いビジネス側だけでなく社会の側にいる人が責任を持って彼につくってもらう。そういう立場が今は面白いと思う。

だから個人のアーティストとしてよりビエンナーレとかのプロデューサーの方がかっこいいと思ってる。凄い大きなイベントを作って、色々なアーティストに声をかけて、沢山作品を見つけて持ってきて世界中から人が来てくれる様な役割をしてる人はかっこいいなって思う。

ー みてみたいです!

やってみたいね。おもしろいね。
できるかな、わからない、難しそう(笑)

ー CRYSTAL IMAGE 0 についての意気込みを聞かせてください。

コロンビアという国は日本ではあまりメジャーではないし、知ってる人は悪い話ばかりかもしれないよね。

ー コーヒーとか紛争みたいな?

そうでしょ?だから、コロンビアのもっと複雑な、もっと幅広いイメージを作ってみたいなって思ってる。だから今まで良く知らないところを興味持ってくれたら是非来てくみてください。